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悪人 (著)吉田 修一
- 2008/02/25(月) 21:20:25
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「悪人」という表題の意味するところは、最後まで分からない。あるいは途中で頭には浮かんで来ているのかもしれない。「悪いのはこいつなのか?」と。しかし、読み進めていくうちにそれが明確な形となり、薄ら寒いものを感じずにはいられなくなる。我々が日々出会う人、そしてその中から親しくなっていく人、あるいは嫌悪感を抱くようになる人。毎日出会いがある中で、しかし彼ら彼女らが何者であり、何を考えて生きているのかをうかがい知ることは、ほとんどない。
吉田 修一
空虚な思いを抱きながら「出会い系」で知り合った祐一と光代が、しかし必要とし必要とされていくうちに愛し合うようになる一方で、しかしどうしても避けては通れない障害が立ちはだかる。物語の後半の、祐一と光代の心のありようが、胸に響く。祐一の引き起こしたことの重大さを忘れ、ただ、彼に、そして光代に心を合わせ、そして心が砕ける。「悪」とは何か。「悪人」とは何か。倫理観や道徳観などといった高邁な言葉を遣うまでもなく、「ああ、悪とはこういうことなんだよな」と思わせてくれた。ストーリー展開の巧みさや、心理描写の巧みさなど、美点は複数挙げることができる。ただ、私は「悪人」が示してくれた人の心の貧しさに、最も感謝するのである。
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